「日産が2年ぶりに黒字化」
この見出しを見ると、「いよいよV字回復が始まったのでは?」と感じるかもしれません。2026年度第1四半期、日産自動車は営業利益779億円、親会社株主に帰属する四半期純利益38億円を計上しました。
- 黒字なら、もう業績は安心なの?
- 円安や一時的な利益は、どれくらい影響したの?
- 本業の自動車事業は、本当に回復しているの?
りゅうでも、「黒字になった」という事実だけでV字回復と判断するのは、まだ早いと私は感じています。
この記事では、日産の黒字を生んだ要因と、投資家が次の決算で見るべき数字を整理します👇
- 営業利益779億円を押し上げた要因
- 資産売却益をどう受け止めるべきか
- 本業の回復を見極める3つの数字


🔍 黒字だけでV字回復と判断するのは早い
決算で本当に見るべきなのは、黒字か赤字かだけではありません。重要なのは、何によって利益が生まれ、その利益が次の四半期にも続くのかです。
商品が売れ、値下げを抑え、原価を下げたことで増えた利益なら、再現性を期待しやすくなります。一方、円安や一時的な利益に支えられた部分は、環境が変われば消える可能性があります。
私が決算で確認するのは、「利益が出たか」ではなく、利益を生み続ける仕組みが強くなったかです。
📊 日産の2026年度第1四半期決算
日産の2026年度第1四半期(2026年4〜6月)は、売上高が前年同期比9.5%増の2兆9,642億円、営業利益が779億円でした。前年同期の営業損失791億円から、1,570億円改善しています。
| 項目 | 2025年度1Q | 2026年度1Q |
|---|---|---|
| 売上高 | 2兆7,069億円 | 2兆9,642億円 |
| 営業利益 | ▲791億円 | 779億円 |
| 営業利益率 | ▲2.9% | 2.6% |
| 四半期純利益 | ▲1,158億円 | 38億円 |
| 世界販売台数 | 70万7千台 | 70万1千台 |
純利益は38億円の黒字に転じ、報道では「2年ぶりの四半期最終黒字」と伝えられました。ただ、売上高2兆9,642億円に対して純利益は38億円です。黒字転換は前進ですが、余裕のある利益水準とは言いにくいんですよね。



見出しは「黒字」でも、利益率と利益の中身を見ると、回復の現在地がより正確に見えてきます。
🧩 営業利益を押し上げた要因
営業利益が前年同期から1,570億円改善した背景には、日産が進めるコスト削減だけでなく、為替や一時的な要因も含まれています。


| 営業利益の増減要因 | 前年同期比の影響 | 見方 |
|---|---|---|
| 為替 | +350億円 | 主に円安・ドル高の追い風 |
| 原材料 | ▲240億円 | アルミや銅の上昇が逆風 |
| 関税 | +183億円 | 前年との比較でプラス |
| 販売パフォーマンス | +237億円 | 価格や販売費、商品構成が改善 |
| モノづくりコスト | +820億円 | 変動費削減などが寄与 |
| インフレ | ▲140億円 | コスト上昇が逆風 |
| 一時的な要因 | +320億円 | 2025年度の米国関税関連の利益など |
| その他 | +40億円 | その他の増減 |
ここで前向きに見たいのは、販売パフォーマンスとコスト改善です。日産は第1四半期に固定費・変動費を合わせて600億円削減し、価格や商品構成も売上高を支えたと説明しています。
一方、為替のプラス350億円と一時的な要因320億円は、毎四半期同じように続くとは限りません。とくに一時的な要因には、2025年度の米国関税に関連する610億円の利益が含まれ、別の一時的なマイナスと相殺された結果、全体では320億円の押し上げとなっています。
🏭 資産売却益は黒字の主因だったのか
今回の決算では、固定資産売却益67億円と事業売却益32億円、合わせて約99億円の特別利益が計上されています。資産売却益があったこと自体は事実です。
ただし、同じ期間の特別損失は187億円あり、特別損益全体では83億円の損失でした。つまり、資産売却益だけで最終黒字になった、と見るのは正確ではありません。
営業利益を押し上げた一時要因として公式資料が明記しているのは、2025年度の米国関税に関連する利益です。資産売却と、営業利益に含まれる一時要因は分けて考える必要があります。



「一時益があるか」だけでなく、それが損益計算書のどの段階に入っているかまで見ると、決算の読み違いが減ります。
🚗 本業はどこまで回復したのか
日産の連結営業利益は779億円の黒字でしたが、自動車事業と消去分を合わせた営業損益は83億円の赤字です。前年同期の1,577億円の赤字から大きく改善し、損益均衡に近づいたものの、本業の自動車事業だけで安定した利益を出す段階にはまだ届いていません。
販売台数も、世界全体では前年同期比0.9%減の70万1千台でした。米国、日本、中国で販売が増えた一方、欧州やその他地域では減少しています。
その一方で、売上高は9.5%増えています。会社側は、為替に加えて、価格と商品構成の改善が売上高を支えたと説明しました。単なる台数勝負ではなく、値引きや売り方を含めた「販売の質」が改善しているかは、今後も確認したいところです。
さらに、自動車事業のフリーキャッシュフローは3,239億円のマイナスでした。前年同期より改善していますが、利益が現金として残る状態にはまだなっていません。自動車事業のネットキャッシュも、前年度末から2,012億円減って9,692億円となりました。
✅ 次の決算で見る3つのポイント
日産の再建が本物かを見るために、私は次の3つを追います。
- 販売の質:台数だけでなく、値引きを抑えながら価格・商品構成を改善できているか
- 自動車事業の営業利益:為替や一時要因が弱まっても、本業で黒字を維持できるか
- フリーキャッシュフロー:会計上の利益だけでなく、投資後に現金を残せるか
コスト削減は利益改善に効きます。でも、研究開発や新商品まで削りすぎれば、数年後の販売力を弱める可能性もあります。短期の利益と、将来の競争力を同時に見ることが必要です。
日産は2026年度通期で営業利益2,000億円、最終利益200億円の見通しを維持しています。今後はこの計画に対して、本業の利益と現金創出がどこまで積み上がるかが焦点になります。
📝 まとめ
日産の黒字転換は、経営再建が一歩進んだことを示しています。ただし、これだけでV字回復が完成したとは言えません。
- 営業利益779億円には、円安と一時的な要因の追い風がある
- 販売条件とコスト改善は前向きだが、自動車事業はまだ営業赤字
- 自動車事業のフリーキャッシュフローは大幅なマイナス
株価は現在の業績だけでなく、将来も利益を生み出せるという期待を織り込んで動きます。「黒字化」という見出しで止まらず、その利益が継続する仕組みがあるのかまで見極めていきましょう。
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品や銘柄の売買を推奨するものではありません。投資には元本割れを含むリスクがあり、利益を保証するものではありません。最終的な投資判断は、ご自身の責任で行ってください。








