三井化学が、ナフサ不足で低下していたエチレン生産設備の稼働率を、約8割まで回復させる見通しを示しました。
最新の会社説明では、2026年7〜9月の稼働率は8割弱の見込みです。プラスチック製品の供給不安が和らぐ可能性はありますが、「もう問題は解決した」と読むのは早いんだよね。

- なぜ中東情勢でプラスチックまで不足するの?
- 稼働率8割なら、供給不安はもう解消する?
- 投資家は三井化学や関連企業の何を見ればいい?
りゅう投資で大切なのは、「不足した」「回復した」で終わらず、その原因と解消策が利益までどうつながるかを考えることです。
この記事では、プラスチック不足の仕組みと、投資判断で確認したい3つのポイントをわかりやすく整理します👇
- ホルムズ海峡からプラスチックまでの因果関係
- 中東以外からの調達で供給不安が和らぐ理由
- 生産回復ニュースを株価材料として読む方法
📰 エチレン生産はどこまで回復する?
結論から言うと、三井化学は生産の回復を見込んでいます。ただし、「8割」は現時点の確定実績ではなく、会社の見通しです。
三井化学が2026年8月14日に公開した第1四半期決算説明の質疑応答では、4〜6月は原料調達の制約で低稼働となった一方、7〜9月は大阪工場の大規模な定期修繕を織り込んでも8割弱の稼働率を見込むとしています。
| 確認できる数字 | 内容 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| 8割弱 | 三井化学の7〜9月クラッカー稼働率見込み | 会社見通しであり、業界全体の実績ではない |
| 66.5% | 2026年6月の業界全体の実質稼働率試算 | 定期修繕の集中も影響 |
| 289,100トン | 2026年6月の国内エチレン生産量 | 前月比で11.1%減 |
なお、石油化学工業協会の7月実績は、記事執筆時点の8月19日にはまだ公表されていません。だからこそ、「8割に戻った」と言い切らず、次の実績確認まで分けて考えることが大切です。
🚢 なぜプラスチック不足が起きたのか
不足の出発点は、エチレンそのものではなく、原料となるナフサの調達制約でした。
- 中東情勢が悪化し、ホルムズ海峡の航行リスクが高まる
- 中東からのナフサ調達が難しくなり、国内クラッカーの稼働を下げる
- ナフサを高温で分解して作るエチレンやプロピレンの生産が減る
- その先のポリエチレンやポリプロピレン、最終的な包装材などに供給不安が広がる





つまり、プラスチック製品だけを見ていても原因は分かりません。海運、原料調達、基礎化学品、樹脂製品までを1本のチェーンで見る必要があります。
🌍 中東以外からの調達で何が変わった?
回復の理由は、ホルムズ海峡の問題が完全になくなったからではありません。他の地域からナフサを確保する代替調達が進んだことが大きな理由です。
資源エネルギー庁の2026年6月資料によると、米国、アルジェリア、ペルーなど中東以外からのナフサ輸入は、情勢緊迫化前の月45万キロリットルから5月には135万キロリットル超へ拡大しました。
さらに、国内精製の継続、川中製品の在庫、化学製品の調達を組み合わせることで、ナフサ由来の化学製品は年を越えて供給を継続できると見込んでいます。
実際、石油化学工業協会の6月実績コメントでも、ポリエチレンやポリプロピレンの在庫は国内需要の3カ月前後を維持しており、直ちに供給困難となる状況ではないとしています。
⚠️ 生産回復でも「業績は全部解決」ではない
ここが投資家にとって一番大切です。生産量が戻ることと、利益がそのまま戻ることは同じではありません。
三井化学の2026年8月5日の決算説明資料では、第1四半期の国産ナフサ価格は1キロリットル当たり11万8,900円と、前年同期の6万6,400円から大幅に上昇しました。
その結果、在庫の価値が上がる「在庫評価益」が一時的な利益押し上げ要因になりました。一方、在庫評価損益を除いた中東情勢の影響は、減産・減販やエネルギー効率の悪化などで2026年4〜6月に約50億円の損失と説明されています。
| 企業の位置 | 生産回復のプラス面 | 残るリスク |
|---|---|---|
| ナフサ・エチレン生産企業 | 販売数量と設備効率の改善 | 原料高、運賃、価格転嫁の遅れ |
| 樹脂・プラスチック加工企業 | 原料の確保と操業の安定 | 調達価格の高止まり |
| 包装・日用品・自動車など | 製品供給の安定化 | 原材料価格が製品原価に残る可能性 |



「生産回復=即業績回復」とは限りません。数量、原料価格、価格転嫁、在庫評価損益を分けて見ると、利益の実力が見えやすくなります。
🔍 私が投資判断で確認する3つのポイント
ニュースの裏側まで読むと、「怖いから売る」「回復と聞いたから買う」という二択ではなく、次の数字を確認できるようになります。
1.7月以降の実際の稼働率と生産量
まずは8割弱という見通しが実際に達成されるかを確認します。定期修繕の影響や需要の強さもあるため、1カ月の数字だけで決めつけないことが大切です。
2.ナフサ価格と製品価格への転嫁
原料を確保できても、高値で仕入れ、製品価格へ転嫁できなければ利益は圧迫されます。売上だけではなく、原料価格と利益率の動きをセットで見ます。
3.調達先の多角化が一時的か、定着するか
今回の回復要因は、供給網を1つの地域に依存しないことの重要性を示しました。スポット調達で一時的にしのぐだけなのか、中長期の安定調達として定着するのかで、次の地政学リスクへの強さが変わります。
🧠 ニュースで焦って売らないために
投資を始めたばかりの人ほど、「プラスチック不足」という強い言葉を見ると不安になると思います。でも、その瞬間に持っている株を売る必要があるとは限りません。
「何が起きたか」の次に、「なぜ起きたか」「会社はどう対応したか」「利益にどれだけ残るか」を確認する。
この順番を守るだけで、感情で売買するリスクを減らせます。
実は、今回のようなニュースは、企業の調達力、価格転嫁力、在庫管理力を比べるチャンスでもあります。同じ業界でも、影響を受ける企業と、強さを示す企業は分かれます。
✅ まとめ:「8割回復」の原因まで読もう
エチレン生産が8割弱まで回復する見通しは、プラスチック製品の供給不安が和らぐ可能性を示す前向きなニュースです。
- 不足の原因は、ホルムズ海峡の緊迫から始まったナフサ調達制約
- 米国、アルジェリア、ペルーなどからの代替調達が回復を支えている
- 投資判断では稼働率だけでなく、原料価格、価格転嫁、在庫評価損益まで確認する
私は、ニュースは売買の答えをくれるものではなく、企業を深く調べる入り口だと考えています。
何が起きたかだけでなく、原因とお金の流れまで追う。そうすることで、焦って株を売る必要がない場面や、むしろ次の投資候補を考えるヒントが見えてきます。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨するものではありません。投資には元本割れを含むリスクがあり、利益を保証するものではありません。最終的な投資判断は、ご自身の責任で行ってください。



