「うちの会社、退職金をなくすらしい」
そんな話を聞けば、「長年働いてきたのに、老後のお金まで減らされるの?」と不安になるのは当然です。特に退職までの期間が短い中高年の方ほど、家計への影響は小さくありません。
でも、退職金制度の縮小や廃止は、単なる制度改悪だけでは説明できません。終身雇用を前提に会社が最後にまとめて報いる形から、働いている間の給与・企業年金・個人の資産形成を組み合わせる形へ移るサインでもあるんです。

- 退職金制度は本当に減っているの?
- 制度が変わったら、これまで働いた分はどうなるの?
- 会社員は今から何を準備すればいいの?
りゅう大切なのは、ニュースだけを見て慌てることではありません。まず自分の会社の制度と受取見込み額を確認し、不足分を自分で準備することです。
この記事では、退職金制度の実態と、会社員が今からできる現実的な備えを整理します👇
- 退職給付制度がある企業の割合
- 退職金の廃止・変更を一律に判断できない理由
- 中高年ほど先に確認したいポイント
- NISAを含む、会社任せにしない備え方
📉 退職金・企業年金がある企業は80.5%から74.9%へ
退職金制度が減っているという感覚は、数字でも確認できます。
厚生労働省の2018年就労条件総合調査では、退職給付(一時金・年金)制度がある企業は80.5%でした。2023年調査では74.9%となっています。
| 調査年 | 退職給付制度がある企業 | 確認できる変化 |
|---|---|---|
| 2018年 | 80.5% | 5社に4社ほど |
| 2023年 | 74.9% | 約4社に3社 |
| 差 | 5.6ポイント低下 | 制度がない企業は約4社に1社 |
2023年に退職給付制度がある企業の内訳を見ると、「退職一時金のみ」が69.0%、「退職年金のみ」が9.6%、「両方を併用」が21.4%でした。
つまり、「すべての会社で退職金がなくなる」とまでは言えません。でも、退職時に一括でもらう仕組みだけが唯一の前提ではなくなっているのは事実です。
🔄 退職金廃止は、報酬の受け取り方が変わるサイン
退職金制度を廃止すると聞くと、会社が負担を減らすために社員のお金を削るように感じます。実際、代わりの報酬がなく、将来の受取額だけが減るなら、社員にとって大きな不利益です。
一方で、制度変更と同時に、毎月の給与や賞与へ振り替える会社、企業年金へ移す会社もあります。大事なのは「退職金という名前が残るか」ではなく、生涯で受け取る報酬と、その確実性がどう変わるかです。


| 報酬の形 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 退職一時金 | 退職時にまとまった資金を受け取りやすい | 会社の制度変更や勤続条件の影響を受ける |
| 毎月の給与・賞与 | 現役中に受け取り、使い道を自分で決められる | 使い切れば老後資金として残らない |
| 企業型DCなど | 自分で商品を選び、転職後も資産を持ち運べる場合がある | 運用結果で受取額が変わり、手続きも必要 |
| NISAなど個人の積立 | 会社と切り離して自分で続けられる | 元本割れの可能性があり、生活資金との区別が必要 |
厚生労働省が掲載する確定拠出年金統計では、企業型DCの加入者数は2021年3月末の約750万人から、2025年3月末には約862万人へ増えています。
これは退職一時金の減少がすべて企業型DCへの移行で起きたことを示す数字ではありません。ただ、老後の報酬が「会社が金額を決めて最後に渡すもの」だけでなく、自分で運用状況を確認するものへ多様化している材料にはなります。



制度変更を見るときは、「廃止」という言葉だけで判断しないこと。給与、賞与、企業年金を含めて、何が減り、何へ置き換わるのかを確認してください。
👥 中高年ほど影響が大きくなりやすい
とはいえ、制度変更を「時代の流れだから仕方ない」で片づけてはいけません。長年勤務してきた人ほど、退職金を住宅ローンの完済や老後生活の土台に組み込んでいるからです。
若い世代なら、給与や積立へ切り替わった後も準備する時間があります。でも、退職まで10年、5年という人は、減った金額を自分の積立だけで埋める時間が限られます。不安や反発が出るのは自然なことです。
税制も長期勤続を前提にした面があります。国税庁の案内では、退職所得控除は勤続20年以下なら1年あたり40万円、20年を超える部分は1年あたり70万円で計算します。
中高年の方が先に確認したいこと
- 変更前に積み上げた分がどう扱われるか
- 経過措置や補償措置があるか
- 自己都合退職と会社都合退職で金額がどう変わるか
- 一時金・年金・企業型DCのどの形で受け取るか
制度変更の法的な扱いや自分の権利は、就業規則、労働協約、雇用契約、変更時の説明内容で異なります。一般論だけで結論を出さず、会社の人事部や労働組合、必要に応じて労働局などへ確認してください。
🧭 転職が選択肢になる時代は「持ち運べる資産」が重要
これまでの退職金は、長く勤めるほど有利になる設計が多く、終身雇用と相性の良い制度でした。
一方、政府の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」でも、労働移動の円滑化や、経験者採用が普通の選択肢になる労働市場の整備が掲げられています。
もちろん、終身雇用が明日なくなるわけではありません。ただ、転職や職種変更を選ぶ可能性が高まるほど、ひとつの会社に長く在籍しないと増えにくい資産だけでは動きづらくなります。
| 資産・能力 | 会社を変えても残るか | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 預貯金 | 残る | 生活防衛資金を確保できているか |
| NISA口座の資産 | 残る | 長期・積立・分散とリスクを理解しているか |
| 企業型DC | 移換できる場合がある | 転職・退職時の移換先と期限を確認する |
| 仕事のスキル | 残る | 他社でも評価される形で説明できるか |
| 退職一時金 | 制度による | 勤続年数と退職理由による差を確認する |



これからは「どの会社にいるか」だけでなく、「会社を変えても残る資産とスキルを持っているか」が、家計の安定につながると私は思っています。
🔎 まず自社の退職金を4段階で確認する
退職金のニュースを見たら、いきなりNISAの積立額を増やす前に、次の順番で現状を確認してください。
- 制度の有無を確認する:就業規則、人事制度、企業年金の案内を探す
- 受取見込み額を確認する:現在辞めた場合と定年まで働いた場合を分けて計算する
- 変更条件を確認する:制度変更の時期、経過措置、これまでの積立分の扱いを確認する
- 老後資金との差を確認する:公的年金、預貯金、企業年金、個人資産を一覧にして不足額を把握する
退職金の見込み額が分からないままでは、「月いくら積み立てればいいか」も決まりません。最初にやることは投資商品の比較ではなく、現在地を数字にすることなんです。
🛡️ NISAは退職金の代わりではなく、不足分を育てる道具
自社制度と見込み額を確認したうえで不足があるなら、会社と切り離した資産形成を始めます。
NISAは運用益が非課税になる制度ですが、預金のように元本が保証されるものではありません。金融庁も、投資には元本割れのおそれがあり、長期・積立・分散を意識することが基本だと案内しています。
- 生活費とは別に、急な出費へ備える現金を持つ
- 無理なく続けられる金額を毎月積み立てる
- ひとつの会社や資産へ集中しすぎない
- 退職時期が近いほど、値下がりに耐えられる配分か確認する
「退職金が減るかもしれないから、投資で一気に取り返そう」と考えるのは危険です。期間が短い人ほど、投資だけでなく、現金、公的年金、働く期間、支出の見直しを組み合わせる必要があります。
✅ まとめ:退職金だけに人生を預けない
退職金制度の縮小は、長く働いてきた人にとって大きな問題です。ただ同時に、終身雇用を前提に会社が老後まで面倒を見る時代から、個人が報酬と資産を管理する時代へ変わる象徴でもあります。
- 退職給付制度がある企業は2018年の80.5%から2023年の74.9%へ低下
- 制度の名前ではなく、生涯で受け取る報酬と確実性を見る
- 中高年ほど、経過措置と受取見込み額を早めに確認する
- NISAは生活防衛資金を確保したうえで、長期・積立・分散を基本に使う



退職金を「必ずもらえるお金」と決めつけず、自社制度を確認し、不足分を自分で準備する。会社任せにしない一歩は、まず数字を知ることから始まります。
※本記事は情報提供を目的としており、個別企業の制度変更に関する法的判断や、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資には元本割れを含むリスクがあり、利益を保証するものではありません。勤務先の制度は就業規則等を確認し、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。



